電材会社の売却を考えるとき、会社の借入と社長個人の保証は分けて確認する必要があります。株式や事業を譲渡し、社長を退任しただけで、保証が自動的に解除されるわけではありません。契約ごとの現状を一覧にし、保証先との相談、最終契約への反映、解除・移行の確認までを整理します。
1.会社の借入と個人保証を契約ごとに分ける
決算書の借入金残高だけでは、誰が何を保証しているかまでは分かりません。借入契約書、保証契約書、返済予定表、残高証明書を照合します。銀行借入に加え、信用保証協会付き融資、車両・設備リース、仕入先との取引に関する保証の有無も確認対象です。契約書が見つからないものは「保証なし」とせず、未確認として残します。
| 区分 | 記入する内容 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 会社の借入 | 借入先、契約番号、残高の基準日、返済期限、月々の返済額 | 借入契約書、残高証明書、返済予定表 |
| 個人保証 | 保証先、保証人、対象債務、保証の範囲・上限、確認状況 | 保証契約書、変更契約書 |
| 担保 | 対象資産、所有者、担保権者、対応する借入 | 担保設定契約書、不動産登記事項証明書等 |
| リース・仕入取引 | 契約先、残期間、未払額、保証・保証金、名義変更等の条件 | リース契約書、取引基本契約書、覚書 |
| 役員との貸借 | 会社から社長への貸付、社長から会社への借入、残高と精算方針 | 勘定科目内訳書、契約書、入出金記録 |
電材卸では、在庫の積み増しや工事店からの入金待ちを借入で補っている場合があります。残高とあわせて使途、季節変動、回収・支払サイトを整理すると、返済後も仕入れや配送を続けられるかを検討しやすくなります。
2.株式譲渡と事業譲渡で確認の出発点を分ける
株式譲渡では株主が変わり、対象会社の法人格は変わりません。会社の借入と旧経営者の保証について、継続・返済・解除・移行の扱いをそれぞれ確認します。株主や代表者の変更時に通知・承諾が必要かも、契約ごとの確認事項です。
事業譲渡では譲渡する資産や事業の範囲を定めます。会社の借入や個人保証まで一括して買い手へ移る前提にはできません。譲渡企業に残る債務、承継を協議する契約、譲渡代金による返済の可否を切り分けます。倉庫に担保がある場合や社長個人が所有する場合は、その利用を続ける条件も別途整理します。
手法が未定でも一覧作成は進められます。法的な承継の可否や必要な同意は、個別契約を基に弁護士等へ確認してください。
3.保証先へ相談する時期と情報の範囲を決める
保証を外したい意向は、候補先の選定や条件交渉の早い段階で支援者に伝えます。そのうえで、誰が、どの保証先へ、どの資料を持って相談するかを決めます。金融機関への相談では、買い手の情報や承継後の事業計画、返済方針など、確認を求められる資料を事前に確かめます。
中小M&Aガイドライン第3版は、秘密保持に留意し、最終契約前または譲渡実行前に保証先の金融機関等へ相談する選択肢を示しています。ただし、事前相談だけで解除・移行が確定するとは限りません。仲介契約や買い手との秘密保持契約も確認し、相談先への開示が可能な状態を整えてから進めます。
4.買い手の約束と保証先の判断を混同しない
買い手が「保証を引き継ぐ」と説明していても、それだけで保証先との契約が変更されたとは扱えません。金融機関等による解除・移行の判断と、譲渡企業・買い手の合意は別に確認します。口頭の説明だけで完了とせず、対象契約、必要書類、手続時期、残っている条件を記録します。
最終契約では、買い手が行う手続、期限、譲渡実行の条件、予定どおり解除・移行できない場合の対応を、弁護士等と検討します。条件未確定のまま進める場合は、何が未確定で、誰がいつまでに確認するかを明らかにしておくことが大切です。
5.実行後も契約単位で確認を閉じる
譲渡実行後は、保証先に解除・移行の完了日と対象範囲を確認し、その結果を確認できる書面を保管します。一つの借入で手続が終わっても、別の融資、リース、仕入取引の保証まで終わったとは限りません。一覧に「未相談・相談中・手続待ち・完了」を記入し、会社の借入返済や担保の扱いも別項目で追跡します。
初回相談では資料をすべてそろえる必要はありません。まず手元の契約書と返済資料を集め、分かっている事項と未確認事項を分けるところから始められます。本記事は一般的な準備の案内であり、保証解除や譲渡成立を保証するものではありません。
あわせて確認したい売却準備
公的資料
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」:p.48〜49の譲渡手法・最終契約、p.50〜52の経営者保証の扱いを参照。本文の一覧は、これらの考え方を踏まえて電材会社の資料整理用に作成した例です。

