編集:株式会社M&A Do(電材M&Aセンター編集部) · 運営会社・お問い合わせ先
電材会社のM&Aでは、在庫数量や売上総利益だけを確認しても、取引後に安全な出荷を続けられるとは限りません。電気用品安全法上の対象判定、届出事業者の名義、技術基準への適合、適合性検査、検査記録、表示、販売制限をSKU単位で結び、さらに事故報告とリコールの連絡網まで証拠でつなぐ必要があります。本稿は、買い手・譲渡企業・金融機関・実務担当者が同じ資料を見て判断できるよう、製品安全DDの確認順序を具体化します。
このページのチェック表、サンプル検証、価格調整、Day1・100日計画は、M&Aの検討に使う実務上の整理例です。法令上の義務や行政見解そのものではありません。制度の適用、必要手続、期限は、最新の一次資料と会社・契約・現場の事実を基に、所管行政庁や各分野の専門家へ確認してください。
商品ごとに、対象品目と事業者の役割を確かめる
電気用品安全法は電気用品の製造・輸入・販売等に関する制度であり、消費生活用製品安全法の重大製品事故報告や、民法・製造物責任・保証契約とは根拠と射程が異なります。DDの最初に法令、契約、安全管理の三層を分けると、表示の有無だけで責任を結論づける誤りを避けられます。
同じ商品でも、対象会社が国内製造、輸入、販売のどの役割を担うかで確認義務は変わります。ブランド名ではなく、インボイス、輸入申告、発注書、製造指図、販売経路を使い、SKUごとに実際の役割を確定することが出発点です。
電気用品安全法の対象と型式区分は、商品名だけではなく用途、構造、定格、機能、セット構成などで確認します。カタログ上の『電材』という呼称は法的分類ではないため、最新の品目表、技術資料、現物を用いた個別照合が必要です。
法令は企業独自のSKUマスター形式を定めていません。対象・非対象、特定電気用品か否か、役割、届出、適用技術基準、検査、表示、証明書、ロットを一行で結ぶ台帳は、法定義務の履行を検証可能にするためのDD上の編集設計です。
届出・技術基準・検査の証拠を現行商品へ結ぶ
電気用品安全法には、届出、変更、承継等に関する規定があります。ただし株式譲渡、事業譲渡、合併・会社分割では法人格や移転対象が異なるため、スキーム名だけで自動承継と断定せず、現行届出の名義と予定行為を行政案内に沿って照合します。
届出事業者には技術基準への適合を確保する義務があり、海外のCE表示やUL認証だけで日本の電気用品安全法上の確認を代替できるとは限りません。適用基準、版、設計仕様、部材、工場、試験成績を一つの変更履歴で追える状態を検証します。
特定電気用品では、登録検査機関による適合性検査と証明書の確認が重要です。証明書の名義、型式区分、有効期間、製造場所、対象範囲が、現在販売しているSKUと仕様変更後の製品を実際に包含するかを個別に確認します。
届出事業者は自主検査を行い、法定事項を記録し、検査の日から3年間保存する必要があります。記録には品名・型式区分と構造・材質・性能の概要、検査年月日と場所、実施者、数量、方法、結果などを含めます。DDでは記録をSKUや製造ロットへ結び、現行商品の証拠として追えるかを確認します。
制度の確認:経済産業省の自主検査・記録保存の案内
PSE表示と輸入・販売経路を照合する
必要なPSE表示がない電気用品には販売または販売目的の陳列に関する制限があります。マークの外観だけでなく、届出事業者名等、表示方法、表示対象部位、EC・カタログ表示と現物の一致を確認し、不明品は判断が終わるまで隔離します。
海外事業者による直接販売を含む制度は2025年12月25日施行の改正を踏まえて確認が必要で、国内管理人に関する仕組みもあります。対象会社の輸入主体、国外メーカーの販売方法、プラットフォーム利用、国内在庫の所有関係を契約と通関証憑で確かめます。
制度の確認:海外事業者・国内管理人制度の案内
経済産業省の流通事業者向けガイドは、仕入先選定、商品採用、販売後対応を含む自主的な製品安全管理の考え方を示しています。法定最低限と社内の採用基準を分け、仕様変更時の再評価や出荷停止権限が運用されているかを見ます。
販売事業者にも必要表示のない電気用品を販売・陳列しないという確認が求められます。店舗、法人営業、EC、カタログ、直送という販売経路ごとに受入時と掲載時のチェックポイントを置き、例外承認者と停止手順を証拠化します。
苦情・事故・リコールの連絡を止めない
法令が一律の社内ロット体系を指定しているわけではありませんが、事故時に対象範囲を限定できる追跡性はリコール実行力に直結します。仕入ロット、製造番号、入庫、保管場所、出荷先、返品を相互検索できるかを実データで試します。
苦情や返品の分類閾値は会社ごとの設計事項です。発煙、発熱、異臭、感電、破損、誤使用、施工不良などの原文を残した上で、同型式・同ロットの傾向を月次集計し、安全部門へエスカレーションされる時間を測ります。
消費生活用製品の製造・輸入事業者は、重大製品事故を知った日から十日以内に消費者庁へ報告する制度を確認する必要があります。販売会社は第一報を止めずに製造・輸入事業者へ伝える連絡先、休日対応、記録様式を整えます。
制度の確認:消費者庁の重大製品事故報告制度
経済産業省のリコールハンドブックは、平時の準備、実施、社告、回収、進捗把握、フォローアップを扱います。DDでは責任部署の名称だけでなく、対象特定、在庫凍結、顧客通知、回収率集計、再通知を模擬演習で確認します。
資料不足を在庫評価・価格・契約条件へつなぐ
製造物責任、売買契約上の保証、保険の補償範囲、顧客との損害分担は同一ではありません。事故・不具合・回収費用を事象別に分け、免責、自己負担、通知期限、遡及日を保険証券と契約原本で確かめる作業は財務・法務DDへの接続点です。
データルームの法定様式はありません。DDではSKU台帳、届出、技術文書、証明書、検査記録、表示画像、仕入・販売履歴、苦情、事故、リコール、保険を版管理し、索引から根拠ファイルまで一方向で到達できる構造を作ります。
出荷停止範囲、是正費用、在庫評価減、価格調整の基準は法令が一律に決めるものではありません。赤旗を『違法確定』と短絡せず、事実未確認、証拠欠落、運用不全、法的評価待ちに分け、再検査や再表示に必要な期間と費用を見積もります。
表明保証、補償、誓約、前提条件、資料引渡しの文言は案件別の契約判断です。対象SKU、対象期間、既知事故、行政照会、証明書、検査記録を別紙で特定し、曖昧な『法令遵守』だけに依存しない契約設計を弁護士と検討します。
初期資料のチェック表
既存の台帳と原本を使い、資料の基準日・対象期間・確認者をそろえます。未提出資料は問題がないものとして扱わず、代替証拠、追加確認の責任者、解消期限を一覧にしてください。次の表は法定様式ではなく、確認を進めるための整理例です。
| 確認する領域 | 集める資料 | 確認すること |
|---|---|---|
| 対象と役割 | SKU台帳、仕様書、輸入申告、発注書 | 対象・非対象、製造・輸入・販売の役割を区別。商品名やブランド名だけで決めない。 |
| 届出と名義 | 届出書、法人情報、変更・承継履歴 | 実際の事業者と名義が一致するか。取引方法ごとの手続と確認先を記録する。 |
| 技術基準・適合性検査 | 基準の版、試験成績書、証明書、仕様変更履歴 | 現行SKU・工場・型式が証明範囲に含まれるか。海外認証だけで代替しない。 |
| 自主検査 | 検査記録、製造ロット、検査機器の管理記録 | 検査日、場所、実施者、数量、方法、結果などの記載と、3年間の保存を確認する。 |
| 表示と出荷 | 現物・外箱の写真、入荷記録、EC・カタログ | 表示と証拠が一致するか。不明品の隔離・出荷停止・再判定の担当を決める。 |
| 追跡と事故 | 仕入・出荷履歴、苦情原文、事故・回収台帳 | 任意ロットから販売先を抽出し、休日を含む第一報と回収の連絡先を試す。 |
| 保証と保険 | 保証契約、保険証券、請求・修理・回収費用 | 免責、限度額、通知条件、対象期間を確かめ、保険回収を当然の前提にしない。 |
資料がそろったら、対象商品・工事・便の一部を選び、上流の契約や仕入証憑から下流の販売・実行記録まで追います。逆方向にも照合し、抽出条件、例外件数、追加確認の理由を残します。疑義は違反確定、適用判断待ち、証拠欠落、運用不全、改善余地に分け、事実を確かめる前に同じ扱いにしないことが大切です。
是正費用は対象範囲、停止日数、単価、顧客への影響から積み上げます。既知の不足、将来の偶発負担、改善投資を区別し、価格、前提条件、表明保証、補償、承継後の担当へ振り分けます。同じ費用を価格調整と補償で二重に控除しないよう、契約条件は弁護士と確認します。
承継当日からの確認計画
Day1以降は、買い手の承認権限、対象会社の出荷判断、仕入先からの仕様変更通知、事故第一報、SKU凍結を一つの運用表へ統合します。三十日で証拠欠落を補完し、百日で追跡演習とリコール訓練を行う日程は、案件に合わせて調整するPMI上の提案です。
30日・100日は計画の目安であり、法定期限や完了の保証ではありません。行政手続の期限、顧客への約束、繁閑、担当者の配置に合わせて日程を調整します。
| 時点 | 確認・実行すること | 残す記録 |
|---|---|---|
| Day1 | 出荷承認、事故第一報、SKU凍結の権限と連絡先を固定する。 | 出荷判断表・連絡網・引き渡した証憑の索引 |
| 30日を目安 | 不明SKUと証拠欠落の範囲を整理し、追加確認の責任者と期限を決める。 | 未確認事項一覧・仕様変更の通知手順 |
| 100日を目安 | 追跡訓練とリコール演習を行い、未解消商品の扱いを判断する。 | 演習結果・販売再開または停止の決裁記録 |
よくある確認事項
PSEマークは国が安全性を認証した印ですか?
いいえ。PSEは、届出事業者が技術基準適合、適合性検査、自主検査等の必要な義務を履行した上で付す表示であり、国から取得する認証と表現しないことが重要です。
輸入も製造もしていない販売会社には責任がありませんか?
販売事業者にも、必要なPSE表示がない電気用品を販売または販売目的で陳列しない義務があります。事故情報の伝達やリコール協力も実務上確認します。
PSE表示のない在庫を見つけたらどうしますか?
まず販売・出荷・陳列から隔離し、対象判定、仕入経路、表示・証憑、数量、販売履歴を確認します。自己判断で表示を追加して販売再開しないよう専門家・行政へ確認します。
重大製品事故を10日以内に報告するのは誰ですか?
消費生活用製品の製造または輸入事業者が、重大製品事故を知ったときに消費者庁へ報告する義務を負います。販売会社は速やかな情報伝達経路を整えます。
譲渡企業が最初に行う三つの準備は何ですか?
自社の製造・輸入・販売役割の整理、SKU別の届出・試験・検査・表示証憑の収集、任意ロットから販売先までの追跡訓練の三つです。
関連する準備・承継の論点
制度確認に使う公的資料
制度の対象・手続・施行日を確認する一次資料です。取引の基準日後に制度や行政案内が変わった場合は、以下の最新版と個別の確認結果を優先してください。
- 経済産業省「電気用品安全法」
- e-Gov法令検索「電気用品安全法(昭和36年法律第234号)」
- 経済産業省「電気用品安全法 製造・輸入事業者ガイド」
- 経済産業省「基準適合確認」
- 経済産業省「自主検査」
- 経済産業省「試買テスト・流通後規制」
- 経済産業省「製品安全に関する流通事業者向けガイド」
- 経済産業省「消費生活用製品のリコールハンドブック」
- 消費者庁「事故情報の集約等」
- e-Gov法令検索「消費生活用製品安全法(昭和48年法律第31号)」
- 経済産業省「海外事業者が製品安全4法の規制対象となりました」
- 関東経済産業局「電気用品安全法FAQ」
- 近畿経済産業局「電気用品安全法FAQ」
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