編集:株式会社M&A Do(電材M&Aセンター編集部) · 運営会社・お問い合わせ先
電材会社M&Aの許認可DDで、対象会社が配線、取付、保守、弱電、消防設備などを請け負っている場合、確認対象は在庫と販売契約だけではありません。実際に行う作業、請負金額、元請・下請関係、営業所、資格者、現場配置を基に、建設業法、電気工事業法、電気工事士法等のどの層が関係するかを整理する必要があります。本稿は、許認可の写しを集めるだけで終わらない工事DDを設計します。
このページのチェック表、サンプル検証、価格調整、Day1・100日計画は、M&Aの検討に使う実務上の整理例です。法令上の義務や行政見解そのものではありません。制度の適用、必要手続、期限は、最新の一次資料と会社・契約・現場の事実を基に、所管行政庁や各分野の専門家へ確認してください。
物販・工事・保守を、実際の作業で分ける
電材の販売と、取付・配線等の工事は同じ取引に含まれていても法的な確認層が異なります。建設業法、電気工事業の業務の適正化に関する法律、電気工事士法を混同せず、会社、営業所、工事種別、作業者の順で射程を分けます。
法令適用は請求書の名目ではなく実際に行う作業で判断します。納品、開梱、組立、配線、接続、試験、保守、撤去を工程に分け、誰が指示し、誰が施工し、誰が検査したかを案件証憑から復元します。
建設業許可は二十九の業種に分かれ、電気工事業、電気通信工事業、消防施設工事業、機械器具設置工事業等は別の区分です。一つの『設備工事』という社内分類でまとめず、完成工事の内容を許可業種ごとに確認します。
建設業許可と電気工事業の手続きを別々に確認する
建設業許可を要しない軽微な工事の基準は工事種類により異なります。建築一式以外は一件の請負代金が消費税込み五百万円未満という基準があり、分割契約や材料支給等も含めた個別確認が必要です。一般・特定の区分に関する下請代金基準も最新情報で確認します。
制度の確認:国土交通省「建設業の許可とは」
電気工事業を営む場合、建設業許可の有無に応じて電気工事業法上の登録、届出、通知等を確認します。登録電気工事業者の登録には有効期間があり、営業所や工事種類の状況も含め、許可証だけで手続が完結すると考えないことが重要です。
制度の確認:経済産業省の電気工事業の手続案内
電気工事業法では一般用電気工作物等と自家用電気工作物に関する工事の区分を確認します。受注実績、営業所、備付器具、従事者資格を区分ごとに照合し、社内の『低圧』『高圧』呼称だけに依存しません。
資格者が承継後も配置できるかを確かめる
一般用電気工事を行う営業所では、主任電気工事士に関する要件を確認します。資格証の写しだけでなく、雇用関係、所属営業所、常勤性、退職予定、兼務、代替候補を人事記録と勤務実態で検証します。
第一種・第二種電気工事士などは従事できる工事範囲が異なり、認定電気工事従事者や特殊電気工事資格者に関する制度もあります。案件の作業内容と資格者名簿を対応させ、単なる人数集計で充足を判断しません。
建設業許可には経営業務の管理体制、営業所技術者等、財産的基礎などの要件があります。M&Aでは現時点の証明だけでなく、役員退任、人員異動、営業所統合後にも要件を維持できるかを移行計画で確認します。
営業所技術者等は営業所ごとの専任性や職務要件が論点になります。名簿上の配置だけでなく、雇用、勤務場所、他社兼務、現場配置、長期休職を確認し、退職により許可維持へ影響する場合の代替案を用意します。
工事現場には主任技術者または監理技術者等の配置を要する場合があり、専任要件は工事規模や契約関係で変わります。現場台帳、工期、担当者、資格、兼任状況を時間軸で重ね、同一人物の物理的な重複を検出します。
株式譲渡・事業譲渡ごとの手続と工事継続日を決める
建設業許可には事業譲渡、合併、会社分割等に係る事前認可制度があります。株式譲渡では許可主体である法人が通常存続しますが、変更事項や実態要件は別に確認し、どのスキームでも自動的に問題がないと断定しません。
制度の確認:関東地方整備局の建設業許可・事業承継等の認可案内
電気工事業法上にも承継や変更等の手続がありますが、対象事業者の区分と取引スキームによって確認先や書類が異なります。クロージング日、工事継続日、名義、営業所、主任電気工事士を一枚の手続予定表にします。
営業所・契約・下請・品質・安全を案件単位で照合する
電気工事業者には標識、帳簿、器具等に関する制度上の確認があります。帳簿は記載事項と保存期間を一次資料で確認し、現物の測定器については台数だけでなく、校正、配置、使用記録まで営業所実査で見ます。
建設工事の請負契約では、書面に記載すべき事項や適正な契約・支払に関する規律を確認します。基本契約、個別注文、変更指示、追加工事、検収、支払、遅延損害を一つの案件でつなぎ、口頭変更の常態化を探します。
一括下請負の禁止や下請取引の適正化など、元請・下請関係には複数の確認事項があります。対象会社が契約上だけ関与し、実質的な施工管理を行っていない案件がないか、技術者記録、会議、検査、写真で判断材料を集めます。
施工品質資料の様式は企業ごとに異なります。設計図、施工要領、材料承認、試験成績、絶縁測定、完成図、引渡書、保守履歴を案件番号で結び、是正履歴が売上・原価と対応するかを検証します。
労働安全衛生、社会保険、労災、車両・工具管理は許認可とは別の確認層です。現場事故、ヒヤリハット、入場教育、協力会社資格、保険加入を工事別に見て、許可があることを安全管理の証明に代えません。
資料と未確認事項を、譲渡条件へ引き渡す
工事DDのデータルームには、許可・登録・届出、変更履歴、資格者、人員、営業所、工事台帳、契約、施工体制、品質、安全、原価を含めます。法定書類と管理上の資料を識別し、基準日後の変更も追記します。
無許可・無登録の疑い、技術者不足、資格範囲不一致、契約不備は、事実確認前に同じ深刻度で扱いません。工事停止範囲、行政相談、代替人員、再契約、是正費用、受注見通しに分解して価格・条件へ変換します。
初期資料のチェック表
既存の台帳と原本を使い、資料の基準日・対象期間・確認者をそろえます。未提出資料は問題がないものとして扱わず、代替証拠、追加確認の責任者、解消期限を一覧にしてください。次の表は法定様式ではなく、確認を進めるための整理例です。
| 確認する領域 | 集める資料 | 確認すること |
|---|---|---|
| 工事実態 | 見積明細、請求、作業報告、現場写真 | 納品・取付・配線・試験・保守を分け、社内名称と実作業のずれを確認する。 |
| 許可・登録・届出 | 許可通知、登録・届出控え、変更履歴 | 法人・営業所・工事区分・有効期間を照合。建設業許可だけで済ませない。 |
| 人員と資格 | 資格証、経験資料、雇用・勤怠、退職予定 | 主任電気工事士、営業所技術者等、現場技術者の役割を分け、勤務の重複と代替者を確認する。 |
| 承継工程 | 取引スキーム、行政照会、認可・変更予定 | 手続の完了日と実行日を合わせ、工事継続に空白が生じないか確認する。 |
| 契約と下請 | 基本契約、注文、変更指示、施工体制台帳 | 追加工事・支払・施工管理の実態を追い、口頭変更や実質関与の不足を確認する。 |
| 品質と安全 | 完成図、試験成績、引渡書、事故・保険資料 | 案件番号で資料を結び、手直し・保証・事故対応の費用と責任者を確認する。 |
資料がそろったら、対象商品・工事・便の一部を選び、上流の契約や仕入証憑から下流の販売・実行記録まで追います。逆方向にも照合し、抽出条件、例外件数、追加確認の理由を残します。疑義は違反確定、適用判断待ち、証拠欠落、運用不全、改善余地に分け、事実を確かめる前に同じ扱いにしないことが大切です。
是正費用は対象範囲、停止日数、単価、顧客への影響から積み上げます。既知の不足、将来の偶発負担、改善投資を区別し、価格、前提条件、表明保証、補償、承継後の担当へ振り分けます。同じ費用を価格調整と補償で二重に控除しないよう、契約条件は弁護士と確認します。
承継当日からの確認計画
Day1には許認可名義、標識、印章、契約承認、技術者連絡網、工事停止権限を途切れさせません。三十日で資格・案件台帳を統合し、百日で営業所・技術者配置と工事採算を再設計するのはPMI上の提案です。
30日・100日は計画の目安であり、法定期限や完了の保証ではありません。行政手続の期限、顧客への約束、繁閑、担当者の配置に合わせて日程を調整します。
| 時点 | 確認・実行すること | 残す記録 |
|---|---|---|
| Day1 | 許認可名義、標識、契約承認、技術者連絡網、工事停止権限を確認する。 | 手続の完了証拠・進行工事の責任者表 |
| 30日を目安 | 資格者・案件・営業所の台帳を照合し、未確認の変更手続きを整理する。 | 台帳・変更予定・追加確認の記録 |
| 100日を目安 | 営業所と技術者配置、工事採算、後継者の体制を見直す。 | 配置計画・是正結果・継続条件の決裁記録 |
よくある確認事項
電材を販売するだけの会社にも建設業許可が必要ですか?
商品の売買だけなら建設工事の請負ではありません。ただし、据付・配線・試運転等を一体で請け負う場合は、契約名ではなく実作業と金額で許可要否を判定します。
電気工事の軽微な建設工事はいくら未満ですか?
建築一式以外の電気工事では、工事1件の請負代金が消費税込み500万円未満が軽微工事の基準です。契約分割で潜脱しないよう一体性も確認します。
登録電気工事業者の登録は更新が必要ですか?
登録電気工事業者は5年ごとの更新登録が必要です。建設業許可を持つみなし登録電気工事業者は制度が異なりますが、許可更新等に伴う変更届を確認します。
無償サービスの設置作業なら電気工事業法の対象外ですか?
電気工事業法上の『業』は有償・無償だけで決まらず、他者から依頼を受け反復継続して施工する実態が重要です。作業内容と頻度を確認します。
Day1で最優先することは何ですか?
許可・登録を持つ法人、営業所、資格者、進行案件の配置、受注権限、行政届出、工事保険を途切れさせず、現場へ連絡する責任者を固定することです。
関連する準備・承継の論点
制度確認に使う公的資料
制度の対象・手続・施行日を確認する一次資料です。取引の基準日後に制度や行政案内が変わった場合は、以下の最新版と個別の確認結果を優先してください。
- 経済産業省「電気工事の安全」
- 経済産業省「電気工事業法の申請・届出等の手引き」
- e-Gov法令検索「電気工事業の業務の適正化に関する法律(昭和45年法律第96号)」
- 経済産業省「電気工事業の業務の適正化に関する法律の逐条解説」
- e-Gov法令検索「電気工事士法(昭和35年法律第139号)」
- 経済産業省「電気工事士法の逐条解説」
- e-Gov法令検索「建設業法(昭和24年法律第100号)」
- 国土交通省「建設業の許可とは」
- 国土交通省「許可の要件」
- 国土交通省 関東地方整備局「事業承継等の事前認可制度」
- 国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン」
- 国土交通省「建設工事の内容」
- 経済産業省「電気工事業者の区分と手続き」
当センターが譲渡企業様から受け取る相談料・着手金・中間金・月額費用・成功報酬は0円です。外部専門家への報酬、税金、登記・許認可・届出の手続費用、その他実費は対象外で、案件により発生します。買い手企業様の報酬・契約条件は別途ご案内し、契約前に説明します。

