電材会社のPMIは、毎日の商流を引き継ぐ計画から
PMIは、M&A成立後の経営や業務の統合・すり合わせです。電材卸では、株式の引渡しが終わっても、翌朝の出庫、メーカーへの発注、工事店への掛売り、緊急配送が続きます。旧社長の携帯に届く注文や、営業担当だけが知る特別単価も含め、誰が何を引き継ぐかを承継前から決める必要があります。
ここでは「100日」を初期計画の区切りの一例として使います。全業務を100日で統合する義務や標準的な完了期限を示すものではありません。拠点、従業員、契約、システムの状況に合わせて期間を変え、安定運営を確認してから次の変更へ進めます。
承継前に作るのは、担当表と未解決事項の一覧
買い手側の責任者、旧経営者、営業・倉庫・配送・経理の担当者を決めます。通常業務とPMIを同じ人が担う場合は、作業量も確認します。「仕入口座を引き継ぐ」とだけ記載せず、承諾の確認者、必要書類、回答期限、未承諾時の代替調達先まで一行にまとめます。
未解決事項には、確認済みの事実、相手方への照会内容、担当者、期限、日常業務への影響を記載します。契約上の承認や経営者保証の解除を、成約すれば当然に済むものとして扱わないことが大切です。保証の整理は個人保証・借入の確認手順も参照できます。
| 区切り | 主な作業 | 完了を確認する資料 |
|---|---|---|
| 承継前 | 受注窓口、承認権限、仕入契約、顧客への説明順を合意 | 担当表、契約一覧、説明対象一覧 |
| 初日〜30日 | 注文・出庫・納品・請求の一連の処理を確認 | 受注残、納品記録、請求照合表 |
| 31〜60日 | 例外単価、返品、配送変更の処理を文書化 | 例外一覧、対応記録、更新した手順書 |
| 61〜100日 | 現状継続と統合案を比較し、次の変更を決定 | 変更案、試行結果、未完了項目と次回期限 |
初月は受注残と請求の境目を確認する
承継日前に受けた注文が、承継後に納品・返品されることがあります。注文番号ごとに受注日、納品予定日、仕入先、売上計上、請求先、入金口座、返品時の連絡先を照合します。株式譲渡か事業譲渡かによって引継ぎの整理が異なるため、会計処理や債権・債務の扱いは契約と専門家の確認に基づいて決めます。
メーカーへの発注停止や配送遅延が起きた際は、営業、倉庫、顧客への連絡が別々にならないよう、報告窓口と判断者を決めておきます。旧社長や番頭役への問い合わせを記録すると、口頭だけで処理していた業務が見えてきます。担当者の引継ぎ資料は地域電材店の得意先・掛売り・番頭役の承継で詳しく整理しています。
週次の数値は、承継前の実態と比べる
確認する数値は、受注漏れ、欠品、納品遅延、返品・誤出荷、回収期日超過、担当者の残業などです。指標の定義と集計元を先に決め、主要顧客・商材・配送便に分けて見ます。季節要因や大型案件の影響もあるため、売上総額だけで統合の成否を判定しないようにします。
例えば欠品件数が増えた場合は、在庫の移動、発注点の変更、商品コードの変換、仕入条件の変更を順に調べます。数字を報告して終わらせず、原因の仮説、対処、確認期限を課題一覧へ戻すことで、次の会議で対応状況を追えます。
仕入と人員の変更は、合意を確認してから進める
買い手の価格表や配送ルートへ早期にそろえると、従来のサービスを失う場合があります。仕切り・リベート・与信枠はメーカー口座と仕入条件の見える化を参考に、口座ごとの承認状況を確認します。人員配置や就業条件を変える場合も、本人への説明と必要な労務確認を行います。
100日目の会議では、継続できた業務、未完了事項、次に変える業務を分けます。拠点やシステムを統合するかは、試行結果と顧客対応力を踏まえた個別判断です。未完了項目には次の責任者と期限を置き、旧経営者への依存が残る部分も明記します。
公的資料と相談先
PMIの体制づくりや計画には、中小企業庁の中小PMIガイドライン・PMI実践ツールを利用できます。上の工程表と電材業務の確認項目は、本稿で示す検討例であり、公的資料の指定様式ではありません。
運営:株式会社M&A Do。本稿は一般的な実務解説です。契約、会計、税務、労務等は個別事情に応じて弁護士、公認会計士・税理士、社会保険労務士等へ確認してください。自社の引継ぎ範囲は電材会社の譲渡・事業承継相談から整理できます。

